前夜は2年前にも訪ねた居心地の良い個人経営の居酒屋で反省会も兼ねた乾杯。懸念していた膝の具合も悪化せずにオプション的な扱いにしていた2日目も走れそうだ。今宵も車中泊。この数年はそれが通例になっている。夜空を見上げると満点の星が広がる。明日も気持ちよく走れそうだ。
●ローカル路線の駅を訪ね、旧中仙道から和見峠へ
紅葉サイクリングの2日目は下仁田の道の駅を起点に、妙義山をぐるりと巡るコースだ。昨日とは違い、人の手の入る田畑や観光施設が多い地域を走ることになる。
走り出して10分も経たぬうちに上信電鉄のローカル駅に立ち寄る。鉄道ファンには有名な駅だ。丁度列車がやってきて旅気分を盛り上げてくれる。ICカードどころか自動改札すらない地方のローカル線。昭和の頃から同じような走り方を守ってきたローカル線に自身のサイクリングスタイルも通ずるものがある。
小高い丘のような坂を幾つか越えると次第に眺望が広けてきた。切り立った岩肌が特徴的な妙義山が見える。荒船山もそうだが、この辺りは浸食によって固い部分だけが残った奇岩的な山が多い。
県道から離れ、急登の小径を登り詰める。昨日は終始暗い印象の集落を繋ぐようなコースだったが、今日は明るい印象の所が多い。明と暗の対照的な走りだが、どちらにも魅力を感じる。これも自転車という移動手段の良い所だろう。
広大な農地が広がり、そこを貫く農道からの妙義山も見事だ。
松井田から国道18号を横切り旧中仙道に入る。横川で寸断された信越本線踏切の側溝にはかつて碓氷峠越えで使われていたアプト式ラックレールが再利用されていた。
旧中仙道は信越本線に沿うように続き、横川駅近くまでやってきた。ここから長野県入りはどの道を選んでも関所のような峠越えとなる。碓氷峠、入山峠、和美峠。それぞれに魅力や役割があるのだが、今回はその中でも、最も交通量が少なく、旧道的な雰囲気のある和美峠(県道92号)を選ぶ。
入山川に沿った路は小さな集落を繋ぐように延びていた。家屋に人の営みがあるかは一目瞭然。
この辺りはクルマさえあれば、それ程不便な場所ではなさそうだが、それでも過疎化が進んでいる。この国の住環境は何れは大都市に集約されて地方の山間集落は消えゆく一方になるのだろう。
緩やかな九十九折れはリズムよく自転車を走らせられる。目指す和美峠が近い。ところが上信越道のインターを過ぎるとクルマが増えてしまい、途端に走りのリズムも狂ってしまう。
日本有数の避暑地、軽井沢が近いというのもあるのか、群馬県側の山肌にも別荘や今流行りとなったグランピング施設などが現われた。昨今のキャンプブームは、ブームにありがちな勘違いが多い。このグランピング施設はペットと泊まれるを謳い文句に、ちょっとした高級ホテルなみの宿泊料金。旅の宿泊費を抑えるためにテント泊してきた昔のサイクリストたちとは真逆な考え方である。
群馬県と長野県との県境となる和美峠に到着。同じ県境の昨日の十石峠とは趣がまるで違う。一息つく雰囲気すらなく、軽井沢方面に向かうクルマの多さだけが目立っていた。
●かつての観光有料道路は廃道に。妙義荒船林道へ
和美峠から県道を少し下ったところから、妙義荒船林道に入る。
ここは10数年ほど前までは、観光有料の林道であったようだが、無料化後に廃道化が進んでしまった悲運の路でもある。看板などは当時の観光林道の雰囲気が確かに残っていた。道路標識には道路占有許可が平成36年までとなっていたが、許可期限満了の前に道路整備は放棄され、そのまま廃道化したようだ。
別荘地の中を進み、車両通行止めの場所で本日の食堂オープン。
食後は廃道と化した林道に入る。もはやクルマどころか自転車でも乗車して走るのは困難。今はハイカーが時折歩き抜けるだけの路となってしまった。
それにしても、ここがかつて有料道路だったとは思えないほどの荒れようだ。有料林道というと、三国峠を越える中津川林道や奥志賀林道などを思い浮かべる。こちらは自然災害などもあり、通行止めとなる事が多いが、この妙義荒船林道は役目を終えて見捨てられたような雰囲気だ。
事前の情報では3kmほど進むと軽井沢からの別荘内道路と合流し、そこから先はクルマの通行可能とのこと。ハイカーのごとく自転車を押して歩くことにした。
崩落箇所はあったものの幸い危険な場所もなく、1時間ほど押し歩く事で廃道区間を抜け出す事ができた。
陽の短いこの時期は15時近くなると夕暮れに迫られることになる。神津牧場に向けて慌ただしく走り出す。
期待していた下り道ではなく、細かな起伏を繰り返しながら標高を増していく。長野県側の眺望の良いところが多く、浅間山が綺麗に眺められた。
時間的なものなのか、走ってくるクルマも殆どない。ここも以前は有料区間だったようだが今は利用する人も少ないようだ。
ようやく神津牧場近くの別荘地まで辿り着いた。
ここまで全く人気のないところばかりだったので掘っ建て小屋のような人工物すら頼もしく見える。この前年の紅葉サイクリングでは日暮れ後のナイトランになってしまったので、今回はそれを避けたかったのだ。
本日の最高所となる神津牧場を見下ろす高台。昨日の十石峠に近い標高1310m。ここまで来ればあとは下仁田の街まで豪快な標高差1000m以上のダウンヒルのみ。
16時前、山頂はまだ明るいが、谷底のようなダウンヒルの先は薄暗くなり始める頃。国道254号目指して急勾配を駆け下りる。ブレーキレバーを握る手が疲れるほどの急坂だ。
次第に夕日に染まった荒船山が見えてきた。国道254号に出ると、緩い下り基調に追い風気味となり、35km前後のファストランモード的な速度の走りで夕闇に終われるように下仁田中心地まで走り抜けた。
●本日のコース/走行距離84km(サイコン値)●
下仁田道の駅→横川→和美峠→神津牧場→下仁田道の駅
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コメント
コメント一覧 (20)
butoboso0217
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峠越えサイクリング2日目レポートありがとうございます!!
中学生の頃にJrスポーツ車を改造し走り回ってたのを思い出します~
ホント、この時期は日暮れが早く、夢中で走って帰りが暗くなり叱られた憶えがあります!
あの時代コチラでは、里山を結ぶ未整備の山道が多く、重い自転車を担いで泥濘や段差を越えるのも楽しかった思い出ですネ(笑)
butoboso0217
が
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なにげに映っていた峠の釜めし「おぎのや」について調べてしまいました
現在では東京の有名百貨店やサービスエリア、ドライブインなどに手広く展開していますが群馬県安中市のあの小さなお店が本店なんですね。
遙か昔、スキーが流行っていた頃未だ関越トンネルが開通していなかったのですがどんなに交通停滞していても帰りに必ず立ち寄りました。
後日、あの釜戸型のどんぶりに母がまた同じように茶飯と鶏肉を入れてくれたのを覚えています(笑)
butoboso0217
が
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こんにちは。
既にこのサイクリングから1ヶ月近く経ってしまいました。たぶん西上州は冬枯れのような景色に変わっている事でしょう。それほど積雪量は多くないので、冬季の西上州も悪くないのです。とはいえ、若い頃のように厳冬期に山に入る力もなくなってしまいましたけどね(汗)。
近年、冬は近所の低山行きのハイクを楽しむようにしています。
butoboso0217
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こんにちは。
仕事の合間に無理やりまとめたので文面がかなり適当になってしまいました(汗)。
もうガチンコレースに出ることはありませんが、こうやって昭和のスタイルでの山走りは身体が動くうちは続けたいのです。
冬季は油断しているとすぐに暗くなっちゃいますね。私は子供の頃は日が暮れてボールが見えなくなるまでよく野球をやっていて親に怒られました。今でもそれを自転車でやっているとは…これまでの経験値が全く生かされていないのです(笑)。
butoboso0217
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横浜も秋が深まっていますが、上州の雰囲気は格別のようですね。
かつては山村にも集落があり、お店があって生活がありましたが、徐々に衰退が進んでいるのですね。以前は通行出来た林道が廃道化してしまっていくのは、寂しいものですが、それに対してどうしていくのがよいのか...
グランピング、若い人たちには人気みたいですよ。キャンプより楽です(笑)ペット同伴可であれば、ブームの昨今、きっと人気でしょう。ソロツーリングとファミリーキャンプでの楽しみは、全然違いますからね~。毎年家族でキャンプに行っていましたが、転居の際に置き場所がなくなり道具を処分してしまいました。バーナーとコッヘル、飯盒は生き残ったので、たまにコーヒーを沸かしたりして使っています。
なかなか行けませんが、そのうち未舗装路を行く山サイクリングがしたいですね。神奈川では大楠山ぐらいしかゲート突破せずに走れる未舗装の山道がないのがさみしいです。悪さをする気はないんですけれどね~所詮自転車で走るくらいで、不法投棄とかそういうことはしないのですが。
butoboso0217
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こんにちは。
後になってから思ったのですが、この日のランチは釜飯にするべきでした!!
おぎのや、鉄道好きには有名ですが、国道沿いにある店の方が駅前本店より知名度が高いようです。高崎駅に行くとだるま弁当や鶏めしと並び、釜飯も大人気。信越本線のあの近辺は駅弁宝庫でもあるのです♪
今はどこも高速道路が繋がり便利になりましたが、峠の釜めしは健在ですね。
あのどんぶりはたくさんたまってしまいますね。庭の鉢植えに使っている人もよく見かけるのです(笑)。
butoboso0217
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こんにちは。
もう1ヶ月近く経ってしまいました。その後の毎日が加速度的に過ぎて行くのです。覚悟はしていましたが今年も半端ない仕事の山に苦しんでます(汗)。
確かに今のキャンプブームは昔の貧乏キャンプとは根本的に考え方が違うのでしょうね。外遊びしたいけど道具も知識もない人には良いのでしょう。ウチは子供が居ないときは女房とテント泊してましたが家族が増えて逆にしなくなりました。クルマがないのもその理由なんですけどね。昔から食への拘りがあまりないので豪華キャンプ飯には全く縁がなかったのです(笑)。
butoboso0217
が
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2日目を楽しみに待ってました😊👍
私は、田舎が大好きだし若い時から通い詰めた西上州が大好きなのでしびれちゃう程、じ〜んと来ました😅(笑)
だんだん寂れていく日本ですが、ウクライナのようにならない事を祈ります🙏
日本の文化、伝統を守りたいですね❣️
山でお湯を沸かして食べるカップ麺 私も昔はそのスタイルでした🤗
アルミボトルをそのままコンロにかけてました🔥
📝そう言えば、余地峠の長野側にあった峠の湯♨️ 昔のニューサイにありましたが未だ未確認です💨
高3の夏、横川ドライブインの軒下で野宿しました😅(笑)
butoboso0217
が
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昔、横川をスタートして碓氷峠旧道を登り、軽井沢へ行った事を思い出しました。カメラ持って行けば、楽しさ倍増ですね。
butoboso0217
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butoboso0217
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おはようございます。
2年前にも思いましたが西上州付近の古道や林道の荒廃が進んでいますね。高速道路やバイパス的な路が増える一方で、それ以外の道は見捨てられたような場所が増えています。
80年代ごろのニューサイを読み返していても、既に入山すら拒むような峠路が増えてしまいましたよ。今回は比較的メジャーな峠を選んだものの、それでも普通のサイクリストを拒むように荒れていましたから…。
余地峠もダムの完成で道が良くなるどころか荒れる一方ですから、峠の湯もどうなったか気になりますよね。
butoboso0217
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おはようございます。
碓氷峠はクネクネカーブが多い分走りやすい道ですよね。途中鉄道眼鏡橋を眺めたりしながら走れますし♪
対して入山峠は完全にクルマ用バイパスで走りにくいですから、今回選んだ和美峠は静かな道で正解でした。ただ、高速インターから先はクルマだらけでしたが(汗)。
昔は重く大きなフイルム一眼レフカメラぶら下げてきましたが、今はオリンパスミラーレスでラクさせてもらってます。防滴ボディ・レンズなので突然の雨でも安心なのです。
butoboso0217
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おはようございます。
廃道、確かに響きはいいですが、実際はドキドキものだったりしますよ。通り抜けられずに引き返すことも計算して行動しないといけませんしね(汗)。
この林道は確かに20年ぐらい前までは有名な観光林道でした。今も走れる区間はそんな雰囲気がありましたが、荒廃区間はかつての名残で道幅は比較的広いものの、クルマが行き交っていたとは思えない荒れっぷりでした。管理しないと家も道もあっという間に荒廃が進んでしまいますね。今はまだ歩いて通れますが、この先、10年後にはハイカーすら拒む道になりそうでした。
butoboso0217
が
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てっきり廃道になった妙義湖からの林道を行かれたのかと思っていたのですが、地図を見ますと、和見峠から先の道がそうであると理解しました。手元のツーリングマップル(かなり古い)では、そんなことは書いていないので、この道もいつか行きたいと思っていたところですが、廃道だともう機会がないかもしれません。貴重な情報ありがとうございます。
下仁田までのダウンヒルは長くて楽しそうですね。でも標高が高いから寒かったのではないですか。
ぶとぼそさんのチェストハーネスにカメラを固定して走るというスタイルはいいですね。いまのデジカメが壊れて新しいのを買ったら、真似させていただくかもしれません。
butoboso0217
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妙義山 名前は聞いたことがありますが 関西からは 遠いです~
手前の信州あたりで走ることになります。
なかなか そこまで行けない!
でも すごく険しくて良い山の形ですね。 神々しいです。
秋の澄んだ景色にマッチしています。
荒船山は 未知との遭遇 のような感じですね。
にほんにも まだまだ 見たことのない景色がいっぱいあるんだと
ちょっとでも 行ってみたいと 思いました。
この時期の 日の短さ 山の中だと 3時前には暗いですね。
よ~く計画練って走らないと えらい目に遭いそうです。
(何度か 真っ暗になって大変でしたという 記憶がよみがえります)
butoboso0217
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こんばんは。
今日も仕事に追われてぐったりしています(汗)。
妙義荒船林道、妙義荒船スーパー林道、何とも悩ましい名称です。どちらも同じなのか、全く別なのか、それとも全て繋げてそう呼ぶのか謎なのです。
気になり妙義湖から伸びる林道を調べたら、こちらは今回走ったコース以上に荒廃が進んでいるようですね。こうなると単独で入るのはかなりの危険が伴いそうですね。
下仁田までは標高差1000m以上のダウンヒルでしたが、寒かったです!! 山肌のコースは良いのですが、沢沿いになった途端に冷気がもの凄かったですよ。
チェストハーネスはとても便利で、今のが3本目。40年近く使い続けていますよ♪
butoboso0217
が
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こんばんは。
長野県の県境の峠を越えた群馬県側はガラリと風景も印象も変わってくるのが不思議でもあり、魅力的です。妙義の山は走り屋クルマの漫画(アニメ)で知名度高めた場所ですが、実際走る場所は限られるようで、昭和の頃は観光地として盛り上げようとしたようですが、今は廃道の宝庫のようです(苦笑)。
この時期は山の上と谷間で全く日差しの度合いが違いますから油断できませんよね。出来れば16時前には下山したいところですが、中々難しいのです。
butoboso0217
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このまま
ニューサイ編集部宛 入稿できそうな
臨場感溢れるレポートですね♪
自分で走るには
ちょっとダルそうなルート
楽しく拝読させていただきました。
butoboso0217
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おはようございます。
ニューサイ編集部とやりとりしていた頃が懐かしいのです。
もはや自転車月刊誌もサイスポだけになってしまいましたね。
今回のコースも8氏におまかせでしたが、西上州界隈もまだ未踏の場所がたくさん残っているのです。ただし、廃道していく所も多いですね(悲)。
しかし、都市部ではたくさんサイクリスト見かけますが、ちょっと離れると全くいません。この2日間で見かけたのはロード2人とMTB1人だけでした。
butoboso0217
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