
秋の会津路を訪ねるのは今回で4回目。
過去の3回は自転車で2回、オートバイで1回。
季節は毎回紅葉シーズンだった。
中でも特に思い出深いのが80年代後半に訪れた時。
会津若松の宿を出発し、まだ未舗装の残る博士峠を目指した。
その道中に魅入った紅葉の素晴らしさは今でも忘れられない。
同時に紅葉=信濃路的な勝手な思い込みを打ち破った瞬間でもあった。
しかし無情な事に、走り納めとした只見駅に到着すると、
数少ない列車は既に30分前に駅から離れてしまっていた。
まだネットなんて普及する前、古い時刻表のダイヤで調べたためのミス。

駅員から同情されるも次の列車は約3時間30分待ち。
もうここから走る気力もなく、素直に列車を待つことにした。
そんな、ちょっとしたトラブルというのは記憶によく残り続けるものだ。
会津若松と小出を結ぶJR只見線は水害による区間運休が続く。
長大ローカル線を持て余す鉄道会社は見放したように復旧作業を進めない。
今回の旅で走った旧道の廃道化と同じように、
思い出の鉄道路線が消えてしまうのは実に寂しいものである…。
☆
●青空高原街道!? 絶景の富貴沢林道へ
凍てつく朝、寝袋から身体を出すのをためらう。
外で出番を待つ愛車もまた陽の光が恋しいだろう。


昨日も最初に立ち寄った見事に色づいた銀杏の木。
今日はハラハラと葉を落とし続けていた。
街も自然も冬支度に忙しく、1日の変化も大きい。
時間が止まったかのような空間・景観ではあるが、
実は都会よりも季節への対応は敏感なのかもしれない。


国道に沿うように延びる裏道を談笑したり写真を撮ったり。
今日もまた、出だしから中々距離は進まない。

ようやく富貴沢林道の取り付きにかかる。
奥に見える山の頂き付近まで上り詰める事に。

想定とは違い舗装路が続くが、落ち葉が広がり林道としての雰囲気も良好。

紅葉地帯を過ぎると、落葉を終えた寂しげな木々の空間となるものだが、
この林道では明るい景観が広がり始めた。



まるで何処かの高原観光ルートのゴール地点のような景観。
薄暗い路を進み、切り通しの峠といった林道特有のイメージとは真逆。
この富貴沢林道は𨦇山(はさみやま)を取り巻くように
絶景の高原風景が広がっていた。

他に入ってくるクルマはなく、ここも二人だけの絶景占有路。
勝手な言い分だが、ここは観光整備等されずにこのまま残り続けてほしい。
自分の脚で上り詰めたサイクリストや登山者だけのご褒美として、
このまま静かな景観を保ち続けて欲しいものだ。


程なく路は未舗装の砂利道となる。
ススキ野原の中を進んで行くと七ヶ岳林道と合流。
ここが富貴沢林道のピーク地点(標高約1100m)であり、ゴールでもあった。

七ヶ岳林道を針生に向かい下り始める。
ここは全て地道であり、気持ちよく走れる部分もあるが大半は悪路。


近年の水害だろうか、昨日の中山峠の路同様に荒れ放題。
下りでありながら、中々スピードは上がらず悪路との格闘。
こんな時は、オールランダーバーと太めのタイヤが頼もしい。
今時のサイクリストならサス付きのMTBなのかもしれないが、
舗装路と悪路の両方を無難にこなすパスハンターという車種は、
こんな行程にはベストな選択肢だと我々は思い続けている。


集落どころか、廃屋を含む人工的な建物が全くないにも関わらず、
突然現れた石仏群と小さな社。
信濃路では多く見られる石仏だか、東北では少ない。
この南会津も例外ではなく、路筋での石仏はほとんど見かけず。
なのに突然現れた林道脇の石仏群。
昔はこの辺りまで集落があったのかもしれない。
建物は既に自然に戻されてしまったが、石仏だけが残されたのだろう。

クルマの音が聞こえて来たと思ったら、林道の終着点となる。
富貴沢林道とは違い、七ヶ岳林道は国道近くまで未舗装悪路であった。
●観光という喧騒に飲み込まれた旧街道の大内宿
国道289号をファストランモードで会津田島へと急ぐ。

サイクル野郎で言う所の「いのししサイクラー」のなまはげの如く、
巨漢の私は平地では俄然とスビードが上がってしまう。

そして空腹を満たすべく入った食事処がまた凄かった。

サービスのお通し。
ご飯とみそ汁があれば、そのまま田舎定食になりそうなボリューム。
そして出された注文の品が出てくると、勢いで大盛りを頼んだ事を後悔する。

ねぎ味噌ラーメン大盛り(950円)の凄い盛りつけ!!
大きめのどんぶりに山盛りのねぎ味噌の具。
その下にはタンメンのような野菜の具が麺との間にトッピング。
8氏の頼んだ生姜焼き定食もまた凄いボリューム。
大盛りの店で大盛りを頼んでしまった失敗感も何のその。
そこは腹ぺこサイクリスト、なまはげの如く全てを平らげた。
再びベダルを踏み出すが、重たいお腹が邪魔してスピードは上がらない。
空腹でペダルが回せなくなる事は多々あるが、満腹過ぎて回せないとは…。

旧国道を会津下郷まで走り、そこから旧下野街道に入り、大内宿を目指す。


奇遇なのか昨日と同じ名称の中山峠をやっつけ、勢いに乗りたいが、
名ばかりの峠で、その先にも登りが続いていた。
偽ピークに騙されつつも、ようやく豪快なダウンヒル。
その先の眼下には、大内宿の旧家群が広がっていた。

昨日の前沢曲家集落とは趣が異なり、こちらは多くの観光客で賑わう。
それを余所者が否定することは出来ないが、何だか興醒めしてしまう。



なるべく人が写り込まないように撮影するが中々……。
宿場の旧家の大半が土産物屋と化し、ここでも多くの外国語が飛び交う。
もちろん、この景観が現代に残されている事は素晴らしい事だが、
何だかわざとらしい映画のロケ地セットのように思えてしまうのは何故だろう。
裏道に回った時に見かけた、この集落の子供であろう遊び姿に少し安堵。
表の顔は化粧が濃いが、裏の顔は素朴な田舎を感じさせてくれた。
いつか雪の降る季節にでも、ゆっくり再訪してみることにしよう。


行程の最後は会津鉄道の湯野上温泉駅。
囲炉裏のある待合室が旅情をかき立てる。
幸いこの路線は冒頭のJR路線とは違い本数も多い。

車窓を眺めていればクルマのデポ地近くの駅まで我々2人を運んでくれる。
着いた駅もまた、地方鉄道としては数少ない有人駅。
しかし、我々が最後の扱い客であったかのように改札通過後には、
駅員が次々と自転車を組み立てる横を挨拶して帰宅していった。
時間はまだ17時過ぎ。
とっぷり暮れた暗闇の中を最後の一踏ん張りとばかりに自転車を走らせた。
〈完〉

【本日の行程】
11月6日
道の駅たじま→会津荒海→富貴沢林道→七ヶ岳林道→針生→会津田島→会津下郷→中山峠→大内宿→湯野上温泉駅→〈会津鉄道〉→会津高原尾瀬口駅→道の駅たじま
08時00分出発・18時00分着 走行距離77km
※旧道はかなり廃道化が進んでいます。走行時の全ての事故・怪我において
自己責任となります。
軽い気持ちで入る事は危険ですし、非常食や水を携帯した上で
単独行はなるべく避けましょう。
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